山中幸宏(アサクラメガネ)・小田島弘幸
1・はじめに
昨年秋にスエーデン製の新しいロービジョンレンズ(弱視眼鏡)が発売になった。このレンズは、近用重視・広い視野・歪みの少ない画像を持つことが特徴としてあげあられる。このたびそのデーターをまとめ、実際にトライアルした感想及び従来からのアイテムとの比較検討を行ったので、若干の考察を加えて報告する。
2・マルチレンズの種類と特徴
マルチレンズは「BINO」「APLANAT」「VIDI」「DUO」の4種類がある。
それぞれの特徴を表す。
BINO
メガネ式。広視角(48〜62度)。歪みを軽減した強度アスフェリック凸レンズにプリズムを加え、両眼で見える様にしたアイテム。両眼が必要ない場合は、片眼用(MINO)がある。倍率*は1〜4倍である。

BINOのデーター

「APLANAT」
凸レンズ2枚を組み合わせて、収差を出来る限り少なくしたアイテム。広視角(48度)。2倍から15倍まで。
APULANATデーター

「VIDI」
ガリレイ式を採用。明視域25cm〜無限遠。倍率2倍。広視角(20〜23度)。

「DUO」
明視距離30cmの2倍の主鏡に近用キャップをつけて倍率を高くする、ガリレイ式を採用した近用専用アイテム。2倍〜6倍。視角19度。
*各アイテムには遮光カラーも染色可能です。(450・511・527・550・偏光)
3・マルチレンズトライアル時感想と症例
「BINO」
・見栄えが良い。
・両眼で見えることが出来るのが良い。
・視野が広い。
症例)33歳男性
vd=0.3(n.c)
vS=0.3(n.c)
希望)手作業がしたい
BINO+10Dを使用することにより、作業が出来そう。
考察)両眼同じ程度の視力で比較的低倍率の補助具が必要なケースの場合には、BINOが有効と思われる。
「APLANAT」
・視野が広い。
・歪みが少ない。
・ガリレイ式の様に作業距離が長くない。
症例)22歳 女性
希望)細かい書類を見たい。書くことも行いたい。
vd=0.04(n.c)
vS=0.04(n.c)
APLANAT/5倍使用で書くときは可能になる。読む場合は見づらい。15倍だと、読めるが作業距離が短くペンが使えない。
作業距離が長くとれるのはガリレイ式だが、視野が狭くて使いづらい。
考察)APLANATの特徴は、広い視野と少ない収差にある。ガリレイ式で視野に不満がある方の場合には、適したアイテムと考える。しかし、作業距離はほぼ単焦点と同様のため、高倍率が必要なケースでは作業距離が短くなり、使いずらいといったケースも生じる。このため、状況に応じて低倍率のアプラナットをフィッティングすることも必要と思われる。例えば、書く場合に見える必要な大きさは、新聞ほど細かくないため、低倍率を使用し、作業距離が比較的長くとれるものとする等である。なお、新聞等より細かい文字を「見る」為には、ルーペ等他の補助具を併用することを勧める。
「VIDI」
・視野が広い。
・明るい。
・倍率が低倍率しかないのが残念。
症例)59歳男性
vd=0.02(0.1×-7.00)
vd=0.1(0.2×-1.50)
優位眼)左
希望)パソコン及び習い事をするため、50cm〜30cmの距離で見える拡大補助具希望。
VIDI主鏡+1m用キャップで(近視があるため)50cmが見える。50cm用キャップで30cmが見える。拡大率は物足りない面もあるが、必要な文字の大きさは、見える。
考察)比較的低倍率を必要とする方で、30cm以上離れた距離でパソコンなどを希望されるケースでは、明るさ・視野の広さにおいてVIDIの有効性が伺われた。
「DUO」
・視野が広い。
・作業距離がとれる。
症例)60歳男性
vd=0.05(n.c)
vd=0.05(n.c)
希望)パソコン使用時に手元で字を書くときに使用できる補助具を希望。(距離を重
視したい。)
主鏡+3倍用キャップで書くことが出来る。
考察)作業距離が必要な方の場合は、ガリレイ式が好ましいと思われる。
4・他のアイテムとの比較検討
「BINO」
比較対照:メガネ
メガネでは輻輳補助のためのプリズムに限度があることなどから作製に限界がある。
「APLANAT」
比較対照:メガネ・ロー ビジョン眼鏡(弱視眼鏡)
メガネ:40D迄はメガネレンズを作製することが可能だが、強度になるほどツボクリ形状のレンズでしか作製が出来ないため、視野が狭くなり、歪みも多くなる。APLANATでは、視野の点と歪みの少ない点で大きな優位性を生じる。
ロービジョン眼鏡(弱視眼鏡):ツアイス社・キーラー社の近用専用レンズとはほぼ同等の視角を持つ。
「VIDI」
比較対照:ロービジョン眼鏡
他のアイテムと比較して視野が広い。
「DUO」
比較対照:ロービジョン眼鏡
他のアイテムと比較してやや視野が広い。
他社のアイテムは遠用〜近用であるのに対し、DUOは主鏡が近用という特徴がある。
考察:マルチレンズは、これまでの弱視眼鏡にない特徴を持ったロービジョンレンズである。ロービジョン方の視生活も、パソコンの普及に伴い多様化している。この特徴を理解し、ロービジョンの方のニーズに合わせてフィッティングすることで、より多様な生活をする上で視生活に於けるQOLの向上に繋がると考える。
*基準拡大率(250mm/ルーペの焦点距離mm)を
倍率とした。
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